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みかん

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 久しぶりの投稿になります。読むために訪問してくださっていたかたがいたら、間をあけてしまってごめんなさい。まだ闇を抜けていないため完全復活ではありませんが。


 数日前、青味の残る みかん を購入しました。例年なら、シーズン最初にみかんを食べるのは早くても10月末ごろです。今年は心が底無しに沈み込んでいくので、食物の助けを借りたくて珍しく10月初旬に買ってきた、というわけです。
 外皮を剥き始めて、あ、と気が付きました。他の果物でも野菜でも、シーズン初め、ハシリの物は柔らかくも鮮烈な瑞々しい香りがするはず。それが今回購入したものは淡い。みかんの良い香りはするけれど、この時期のものにしては少し淡すぎる。食べてみると酸味がほとんどありませんでした。
 これが何を示しているかというと、「その実が収穫された木や土が疲れてしまっている」ということです。生産地の表示を見直すと、今年厳しい気候にさらされた地域でした。花の後に実をつけて収穫に至るまで、みかんにとっても暑さや雨との厳しい攻防の日々だったのでしょう。実に残るビタミンがやや少なめになってしまったらしい薄甘いみかんを、大切にいただきました。

 この話を投稿するかどうかしばらく迷いました。
 読んでくださった方がどう受け取るか、それを書き手である私はコントロールできません。シミュレーションでいくつもの予測はするものの、数も方向も勢いもすべて予測するなんてことは不可能です。栄養が減っているかもしれないなら他の生産地の物を買うという人が現れるでしょう。他の果物にするという人もいるでしょう。今挙げた例は買い控えを引き起こしかねないので、わかっている人々はあまり言葉にしません。
 けど、家庭の格差によってそういった知識に出会えない人もいることを思うと、放っておけないのです。病気や怪我からの回復を意図する人が素材を厳選したからといって、誰が責められるでしょう。それに、いや私は生産地を応援するよと選んで買う人もいるかもしれないし、毎年同じ生産地の物を食べているという理由で選ぶ人もいるはずです。厳しい自然を乗り越えた作物だから食べる意味や価値があるという、崇高な目的の人もいるかもしれません。同じ事象に遭遇した人達がそれぞれどんな行動を起こすかなんてとても読み切れるものじゃない、でしょう?
 いろいろな考え方をしてみてください。最初に思ったこと、それと反対のこと、それらとは全く違う考え。それぞれの着眼点から、現在の自分達に適切な道を選べばそれでいいと思います。昨日と今日で違う道を選ぶことだって有りなのです。
 私は、そうですね、とりあえず投稿の余波代として同じ生産地の物をもう1度購入します。「この時期にしては酸味が弱い」というだけで、みかんとしては十分おいしかったので。みかん以外の物も食べて生きているから、栄養は他で補うつもりです。

 まあ、今年は大変ですよね。日本中(大雑把な情報収集だと世界も)どこも気候が厳しくて、直売所の野菜でさえ元気が無い物も少なくない状態。「目標の栄養量を摂るために例年より多く食べる?」というのもそう簡単にはいかないですしね。許容量は急に変えられないし、消化器官に負荷をかけて病気になっても本末転倒。私も大失敗してます。よりにもよってこの夏に、落ち込んだ時にうっかり食が細くなって、そこから坂道を転げ落ちて現状です。抜け出したい…情けないー!あとこんな恥ずかしいことをネット上に晒して自己嫌悪もあったり。
 そもそも食事の全てを成分分析にかけてそれぞれの栄養量を把握しているわけでもないので、今年のような場合、頼りにできるのは健康に対する自分の定規だけです。「なんとなく」元気が出ないとか、「なぜか」疲れが抜けないとか。いつもの食事では不足してしまう年もあることを、頭の片隅に留めておいてもらえたらいいなと思います。

  自分の身体の声を聞くこと、
  そして身体が正しく発信できるよう調整すること。

 これが出来るようになれば、身体に今必要な(あるいは不足している)栄養がわかるようになってきますから。自分でご飯を作る環境をようやく手に入れたとき、私はゼロどころかマイナスからのスタートだったのです。そんな私でも多少はわかるようになれましたから、たぶん難しいことではないと思います。

 読んでくださった方と周りの方々が健康でいられますように。
 今年はしばらく穏やかに過ごしましょう。
 


 文章入力のとき、入力中の行にスクロールされない(?)問題が解決していました!自分では何も(本当に何にも)する余裕がなかったので、WordPressかプラグインの方で対処してくださったのかな。ありがとうございます、とても快適です。本当にありがとう!

 

食べる力(ちから)

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 久しぶりに大きかった心の不調から少しずつですが回復してきました。個人サイトとはいえそこまで書かなくていいよと言われそうですが、観察力のあるかたは更新ペースや食事の内容で「あれ?」と感じていたかもしれないので一応ご報告をさせていただきます。
 誰もが当たり前のことだろうけど、私も自分なりには「My不調のスペシャリスト」道を着々と歩んでいるとは思うんですよ。詰まるところ、怪我も心も私の場合は「とにかく食べよう」が回復への第一歩だと、今回も自分を観察していて改めてわかりました。

 家で調理をするのは私だけなので、食べることは概ね自分で作ることになります。新鮮な野菜や果物の芳香は「第一の薬」、そのまま或いは調理したりして実際に食べるのが「第二の薬」。10年以上前、自分の死を身近なものと捉えなければならなかった頃にそれでも調理を続けて、このことを実体験として学びました。最後まで芳香を感じ続けることができたごぼう人参レモン生姜と、暖かい時期にはトマトも、それらの芳しさに支えられていました。ごぼうや人参は弱った私には硬すぎて、1~3回包丁を入れては一呼吸休んで、を繰り返してやっと切り終えるという残念な有りさまながら、きんぴらごぼうと豚汁は可能な限り作り続けたのです。
 生き延びて後年、「薬すら負担に感じる弱った人間には医食同源しかない」と考えて中医学(中国の医学)を独学で少しずつ学んでいますが、その初歩の段階にまさに「芳香の薬効」について解説されており、自分が生き延びた理由の一端を理解したのでした。

 そんなわけで、今回も食べ物に力を分けてもらいながら数日を凌ぎ。
 最終的に、私を今回の不調から救けてくれたのは「 桃(とレモン) 」と「 鰻の白焼 」です。どちらも私にとっては贅沢品です。鰻に至っては言葉の頭に超を付けたいレベル・・・。実は鰻の白焼、買い物のタイミングが悪かったのか2~3年まったく見かけなくて、ずっとずっと「食べたいなー」と恋焦がれていたもの。この後の食費の遣り繰りは考えなければいけませんが、しかし!何と言っても数年ぶりという精神の海溝に沈んでいたわけなので、ここから自分を引き上げるには課金も必要。そう考えて、ここであったが100年目(※2~3年です)、えいっとばかりにカゴに入れレジスターへ向かいました。
 買い物から帰ると台所が桃の芳しさに満たされて、その幸福感たるや・・・。桃はもうどんな褒め言葉も及ばない、ただ堪能すればよいのだ!(ただの桃好き) いっぽうの鰻の白焼は出汁とわさびでそのまま、或いはスパゲティで洋風に。考え出したら止まりません。こうして私は狙い通り回復しはじめたというわけです。

 うん。ただの食いしん坊噺だったな!


思い出の揚げ茄子

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昨夏の終わりごろだったか、夕飯の茄子の小鉢を食べていた夫が突然、「昔さ~・・・」と話し出した。夫は育ちなのか自戒なのか「食べ物についてあれこれ言ってはならない」を信条にしているようなところがあって、普段あまり美味い不味いを言葉にしない。そのうえ食べ物の記憶なども自分から話すことは無く、尋ねても「うーん特に覚えていない・・・」と作り手に寄与する応えを聞かせてはくれないのだ。そういうわけだから夫の「昔さ~・・・」には大いに驚いたのだが、こういう時は過剰に反応すると相手の言葉が引っ込んでしまうので、努めて平静を装って言葉の続きを待った。

夫曰く、高校生ぐらいのころのこと。毎年夏になると、大量の揚げ茄子がドーンと大皿に盛られて食卓に並んだ、夏の盛りともなると毎晩のようにドーンドーンと続いてとにかく食べまくった、というのだ。
自分の中に深く潜行している眼差しだったので邪魔しないようにそっと「それで?」と促してみると、「今思うと油ものが毎晩続いて胃もたれするよなとか」「残ると弁当にも入っていた」とぽつりぽつりと聞かせてくれた。「続くにしても毎日大皿にドンッていうのは手抜きだよな、盛り付けを工夫するとかさー」と言い始めたので私も口を挟むことにした。
「もしかして茄子を油で調理したもの、実は苦手だった?むかし散々食べて飽きちゃっていたとか」と水を向けると、夫はハッとして「いやっ、こういう小鉢として完成しているようなのは別にいいんだよ・・・」と私におもねるような発言をした。夫は「小鉢として完成」と言ってくれたが、一口大に切って細目に飾り包丁をして油で焼いたものに茗荷をのせてぽん酢をかけただけのものである。やれやれと思いつつ、こちらの言い方も少し意地悪だったと反省して、お詫び代わりに夫の思い出を少し繙(ひもと)くことにした。
「ごめんごめん、でもそれだけ食べられたってことは揚げ茄子は好きなの?」「そう、かな?」「なんで疑問形・・・毎日のように食べていたんでしょう?」夫は高校生のころ義母(夫の実母)と2人暮らしだったので、大皿の半分以上の揚げ茄子を平らげていたはずだ。確認すると「うーん、確かに『俺は虫か?』ってくらい結構毎日ぱくぱく食べていた」と言う。「それでも揚げ茄子が好きかと言われると、うーん・・・」とまだ自分でも納得がいかない様子の夫を眺めた後、先ほどとは少し違うやれやれを抱きながら口を開いた。
「本人がわからないものは私にもわからないけど、少なくともお義母さんのほうはあなたが揚げ茄子を好きだと思っていたかもね」「えっ、そう思われていたのかな。出されたものを食べるしかなかったから食べていたんだけど」「あなたの食べっぷりがいいからお義母さんも作るのが楽しかったんだと思うよ。それでついつい沢山揚げちゃってドーンて量になったりよく食卓に上がったりしていたんじゃないかな?」夫の表情があっ、と変わった。「そう、かな」「たぶんだけど」。
「そっか」と呟きつつ、夫はまだ自分の内側を探している様子だった。あまりヒントを出すのも良くないけれど、この体験が後に夫ひとりでも繙きができる基礎となればいいと思ってもう少しだけ続けることにした。
「後さー、高校生とか大学生くらいの年代ってびっくりするくらい食べるよね。人生で1番っていうくらい食べなかった?」「確かに!」「放課後友達とマックに寄ってきた日も、うちに帰ってご飯食べておやつも食べるみたいな」「あったあった!」寄り道しなかったタイプに見えていたが、夫にもあったのか。「お義母さんは料理に明るかったじゃない?揚げ物は満腹感も得やすいから、『フライドポテトやポテトチップスにハマるより揚げ茄子で満足して!』とも思っていたかも」「それ、あったかも」「寄り道しない日もあるし、その日の適量に合わせてあなたがおなかいっぱい食べられるように、お義母さんなりに考えてくれての大皿盛りで手抜きってわけでもなかったんじゃないの?」「あ・・・」ふっと夫の表情が深く和らいだのを見て、私も満足したので話を切り上げることにした。
「後ねー、お義母さん、野菜をお裾分けしてくれるお友達がいたのよ。夏野菜って次から次と穫れまくるのよね・・・」「あー・・・!」今日1番の納得がいったという顔で夫は力強く頷いた。

話の最後にオチのようなおまけをつけてしまったけど、その日夫は寝るまでずっと仏像のように柔和な表情だった。あなたは大切に育てられてきたんだよ。それを私もわかっているから、その思いを継いでいるよ。ま、そんなこと言わないけれど。
でもいつか、私が先立った後に「そっか」と思ってもらえるように。
料理のプロだったお義母さんには及ばないけど、せめて食べ疲れしない料理を作り続けようと思っている。今年もおいしい茄子が食べられますように。


追記(22時間後):

お義母さんの揚げ茄子
 材料   茄子 サラダ油 薬味(その日有る物で)とめんつゆ
 作り方  ・茄子は水洗いしてへた(がく)の部分を切り落とし、水気をとる。
        ざるにあげておいてもいいし、拭き取ってもいい。
      ・薬味とめんつゆを用意する。
        生姜やにんにくを刻んだり卸したりしたものが多かったそうだ。
      ・天ぷら鍋でサラダ油をあたためはじめる。やや高めの中温にする。
      ・油が適温になったら、茄子を縦に4つまたは6つに切って素揚げにする。
        茄子は切り口から変色するので、油に入れる直前に切る。
        鮮度が高いと切り口から水分があふれてくることがあるので、
        紙などで拭き取ってから油に入れる。
        いちどきに量を入れ過ぎると油温が下がって仕上がりがよくない。
      ・カラリと揚がったら必ず網に載せて粗熱をとる。
        このひと手間を省略すると、カラリと揚がった茄子が残念になってしまう。
      ・大皿に向きだけは揃えつつ大胆に盛る。
      ・各自にめんつゆを用意して、薬味は好きに合わせて食べてもらう。

 これが義母から教えてもらった揚げ茄子のおおよそのレシピです。おおよそ、というのは…揚げ物が苦手で作っていないからです天国のお義母さんごめんなさい。大量の油を扱えるだけの技量がまだありません…。
 義母によると、「揚げ物は『具材の水分処理』と『油温管理』を間違えなければ(油が)はねることはないから大丈夫」だそうです。
 ちなみに昔義母から聞いた話では、ひとりひとり盛り付けることもあったはず。その際は茄子を縦2つ割りにして斜め格子の飾り包丁をして、薬味も茄子に載せて盛り、めんつゆにつけるのではなくかけて食べたそうです。義母は揚げて作っていたけれど、おそらく夫はそれを「焼き茄子」と認識していたに違いないと推察しています。


恥ずかしながら、話題に出したので・・・
茄子の小鉢
 材料   茄子 油(オリーブ油、胡麻油など) 薬味 ぽん酢(または出汁酢)
 作り方  ・茄子は水洗いしてへた(がく)の部分を切り落とし、縦半分に切る。
      ・斜めに1~2mm幅の飾り包丁をして、一口大に横に切る。
      ・深さのある容器に移し、うすく塩をまぶして5分くらい置く。
      ・薬味を用意する。特に決まっていなくて、その日家にある物。
        大葉 極細切り   生姜 極細切り、すりおろし
        みょうが 横向き(繊維を断つ方向)に細切り
        かつおぶし 胡麻
      ・水を加えてザッと流し水気をよく切る。急いでいるときは紙で軽く拭く。
      ・フライパンに茄子を並べる。縦半分に切った際の断面を下にする。
      ・並べた茄子に油をかけて、フライパンを中火にかける。
      ・焼き色がついたら裏返す。
      ・茄子、薬味の順に盛り付けて、ぽん酢(または出汁酢)をかける。
        組み合わせは無限。近年はレモンとわさびと出汁などでも。

 義母の揚げ茄子を作れない私が代わりに作る焼き茄子、どのご家庭でも食べているであろう普通のおかずです。ご家庭によっては「油茄子」と呼ばれているかもしれません。調理後に大量の揚げ油と格闘しなくていい、それだけで「また作ろう」と思えるひと品です。フライパンに残る油はキッチンペーパー1枚で十分拭き取れる程度なので、片付けや家計の面からも焼き茄子に軍配が…。
 火が弱すぎて加熱に時間がかかりすぎたり、最初に油をかけるときにかかっていなかったりすると、茄子の紫が茶色くなります。油をうまく回しかけられなかった日は、フライパンの中で(サラダにドレッシングを混ぜるときのように)茄子に油をまとわせてから並べると茄子の紫色が守られます。仕上がりが茶色くなってしまったら・・・出汁酢よりもぽん酢がおすすめ。いっそソースととろけるチーズで大胆に目隠しするのもおいしいですね。大人にはソースと練り辛子とトマトペーストもお酒がすすむ危険な味わい。話が焼き茄子からどんどん離れて行っていますw。
 追記なのに、食べ物の話だと長くなってしまいますね!食いしん坊ですみません。この辺りで。