転んで起きて。

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 昨夕、少し夫に当たってしまった。自分で思っているより心が疲れているらしい。
 夫は気遣って関心を向けてくれたのだ、「野菜の値段、最近上がったりしている?」と。「仕方のないことだ」と私は説明した。春の訪れが早いと思ったら3月の末に雪が降り、4月10日過ぎの今また雪が降ろうとしている(実際に降りました)、今年のような特異な気候のもとでは野菜などの食品は影響を受けるのだと。この冬は暖冬で雪が記録的に少なかったはず、水不足が起こるかもしれない、今年の米はどうなるだろう。そこまでパッと浮かんでうっかりそのまま口に出してしまった。
 「心配し過ぎじゃない?」と夫は言った。不安の芽を言葉にしたら、夫は私がそれに囚われないように否定の言葉を返す。いつもどおりの会話の流れだ、予測できないことではなかった。それなのに、このところの陽気で夫も私も少し気が緩んでいることを懸念していたことも影響して、自分で堤防を突き崩してしまった。
 心配し過ぎじゃないよ・・・。呑みに行きたいとか休日に遠出したいというあなたの気持ちはわかるけど、今がどんなときかわかってる?…日本の食糧自給率を考えてみてよ。100%には程遠くていろいろな国からの輸入に頼ってる。だから政府は「バラマキ」と批判されても国際機関や他国に資金を出し続けているのかもと思って、私も我慢して見守っている。…でも、その輸出国でもコロナは流行っていて外出制限やお店の品不足が起きている。COVID-19だけじゃない、世界には今イナゴの害もある(2020.04.15訂正、サバクトビバッタです)。遠からず、これまでのようには日本に食糧が入ってこなくなる未来も可能性の1つとして想定しなくてはいけない。…買い占めや買いだめが批判されているけれど、彼らはその危険性に思い至ったか無意識に危機を感じ取っていて、大切な人たちを守りたくて闘っているのだと思うよ。…「戦時下」という言葉を使った外国の政治家が何人かいるけど、対岸の話ではない。日本も世界もあらゆる面で備えなくてはならない時。…話を戻して、日本が今どのくらいの危機に直面しているかを戦時らしい例えで言ってみるとね、国を挙げて今すぐに全ての公立学校の校庭に農業用の土を運び入れて畑を作り、豆や野菜や芋を植えて育て始めなければっていうくらい。収穫まで数ヶ月かかることを考えたらいろいろと遅すぎる。・・・
 というようなことを、淡々と言葉にして心のうちから送り出してしまった。合間に夫の受け答えがあって、一応会話として成立していたけれど。「確かにそこまでされたら今までと同じ感覚で遊びに出歩く人はいなくなるね…」と夫は真顔になってしまった。ああごめんなさい、気にし始めて4ヶ月、とうとうやってしまった…。COVID-19の受け止め方なんてそれぞれで、夫だって危険性をわかっていないわけではない。知っていながら、夫の心の灯を私が消してどうするのだ…。未来について考えるときは3方向、いい方と悪い方と現状維持のそれぞれの方向を必ず想定するようにしている。そう、これはただの想定で、ペシミストの私が考えた悪い場合の仮定のひとつに過ぎなかったのに。これではコロナ離婚になってしまう。
 COVID-19がもたらした世界的な惨事のただ中で確定しているのは、収束させる方法は未だ無いという不安と何とかしようとしている人達も大勢いるという希望。
 先の道のりは長い。嘆きながら暮らすなんて難易度が高すぎる。肯定する言葉を使って、夫の心に再び希望の灯をともそう。闇を抜けるまで一緒に歩き続けよう。


 2020年4月13日現在で、COVID-19による死者は10万人を超えました。
 亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。やりきれない別れ方をしなければならないと聞きます。遺された方々の心にいつか慈しみの雨が届きますように。
 医療をはじめ様々な現場でご尽力されている方々のご健康を心からお祈りします。
 この禍をひとりでも多く乗り越えられますように。